自身もひきこもりの経験を持つアーティスト渡辺篤が

横浜市役所で開催されるひきこもり啓発イベント内で個展開催

2025年1月10〜15日

 

 

「ひきこもりフェスティバル」チラシおもて

 

「ひきこもりフェスティバル」チラシうら

 

 

渡辺 篤(アイムヒア プロジェクト)は、横浜市役所1F で

2025 年1 月10 日~15 日に開催される 「ひきこもりフェスティバル」内にて

個展「風穴に月」を行います。

※本展でのアーティスト名は「渡辺 篤(アイムヒア プロジェクト)」となります。

 

 

渡辺篤は、横浜市出身で、東京藝術大学大学院修了後、アーティストを目指している過程で、足掛け3 年のひきこもりになり、その後、現代美術家として社会復帰しました。 そして、直後から現在まで、多くの作品制作やプロジェクト活動を精力的に行ってきました。近年は国内外の美術館や芸術祭で作品を発表しています。また自身の当事者経験を活かし、講演会やメディア出演、執筆、などを通じて社会活動家としても活躍しています。

今回は、孤独・孤立当事者たちと協働を行う「アイムヒア プロジェクト」名義での作品など、近年の代表作やインタビュー映像などを、渡辺の地元でもある、横浜市役所に展示します。

 

 

 

<展覧会ステイトメント>

 

ひきこもり続けることも終えることもどちらも苦しいというアンビバレントな感情は、当事者経験をもった者でないとわかりづらい感覚かもしれません。ひきこもりだった当時の私は、もうこの社会に戻ることはないと決めつけ、セルフネグレクトのような意識で、積極的に部屋に閉じこもり続けました。あっという間に日々は過ぎ、いつしか本当に、自分の力だけでは状況を変えることが出来なくなっていました。しかしどこかで、自身の気持ちにとことん向き合ってくれる人が現れるのを待っている気持ちもあったのです。連続してしまっていくひきこもりの時間に「風穴」が空くことを求めていました。

 

私はその後、ひきこもりを終えることとなりましたが、その理由の一つは、相互扶助の必要性に気がついたからです。それは母親の痛みを垣間見たことがきっかけでした。私にとってのひきこもった長い時間とは、言い換えれば、自分の痛みばかりにとらわれてしまっていた時間でもありました。当時私が抱えていた怒りや悲しみは、母親との助け合いを起点とし、その後、多くの当事者と協働する活動に展開していきました。

 

夜空に昇る月は、ここにいない誰かを想像する象徴といえます。しかし月は、会えない恋人や家族を思うようなロマンティックなストーリーの媒介に留まりません。SNS の発展以降、我々はこの社会でそれまで語られづらかった生きづらさやマイノリティの事情があることを、今まさに知っていく時間を過ごしています。あなたが月を見た時に、きっとここにいない誰かも月を見ています。向こう側にはあなたの想像し得ないような痛みを抱えている人もいるでしょう。お互いに他者を思いやることこそが、それぞれの日常に小さな風穴が開き、それまでとは異なる考え方や意識が吹き込んでくるのかもしれません。

 

渡辺 篤(アイムヒア プロジェクト)

 

 

<企画概要>

渡辺 篤(アイムヒア プロジェクト)個展「風穴に月」 (「ひきこもりフェスティバル」内企画)

会期:2025年1月10日(金)〜15日(水) 時間:9:00〜21:00(最終日18時まで)

会場:横浜市役所1F|「展示スペースA」(メイン会場)、「アトリウム」(1月15日のみ追加展示)

主催:横浜市健康福祉局

お問い合わせ: 健康福祉局生活福祉部ひきこもり支援課

 電話:045-752-8463

 メール:kf-hkshien@city.yokohama.lg.jp

 公式ページ(横浜市)

「ひきこもりフェスティバル」イベント全体としてのプレスリリース情報

 

 



 

 

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(媒体への写真使用のご連絡は必要ございません)

 

 

渡辺篤(アイムヒア プロジェクト)《Your Moon(プロジェクト「同じ月を見た日」)より》2020~2024 年

撮影:大倉英揮 展示風景:「あ、共感とかじゃなくて。」(2023 年、東京都現代美術館)

 

※本展ではこの作品の最終形を展示

 

渡辺 篤(アイムヒア プロジェクト)《月はまた昇る(プロジェクト「同じ月を見た日」より)》2020~2024 年

撮影:岩本順平 展示風景:神戸六甲ミーツ・アート2024beyond

 

※本展ではアーカイブ写真として展示

 

1、プロジェクト「同じ月を見た日」(2020~2024 年)

…本展では、同シリーズから2 作品《Your Moon》と《月はまた昇る(写真)》を展示します。コロナ禍は一時的に、‘‘誰もがひきこもりになった”と言われた期間でした。渡辺篤は、感染拡大直後に、“コロナ禍に孤独・孤立を抱えていること’'を条件にメンバー募集を行い、国内外約50人にスマホ用小型望遠鏡を無償で発送し続けました。月の観察・撮影を介して、自他の孤独を受け人れ、認めていくような柔らかな繋がりを作る取り組みです。メンバーは4割ほどがひきこもり。その他は、コロナで寮から出られなくなった大学生や、障害を抱えている当事者やその家族、シングルペアレントなど、コロナ感染拡大によって社会的な繋がりが絶たれやすい人々などが集いました。本展では、2024年初夏の活動終了までに世界中から集まった約2 千枚の月の写真をライトボックスに時系列に並べた《Your Moon》、2024 年夏に「神戸六甲ミーツ・アート2024beyond」に出展した《月はまた昇る》の展示風景の写真を展示します。孤独・孤立問題の取り組みの難しさは、当事者の声や姿を、社会の多くの 人が想像をしづらいということがあります。姿の見えづらくなった誰かも、同じ時間、別の場所で月を見ているかもしれません。相互扶助の社会を作る ためには、ここにいない人・ここに来ることが出来ない人についても想像する必要があります。

 

 

渡辺 篤《七日間の死)》2017/2019 年

撮影:井上桂佑 展示風景:「雨ニモマケズ (singing in the rain) 」R16 studio(神奈川)

 

※本展では映像インスタレーションとして展示

 

2、《七日間の死)》(2017/2019年)

…コンクリートでできた一畳サイズの箱に1週間、自身を密閉するという過酷なパフォーマンスを、渡辺篤はこれまで度々行ってきました。7 日目にカナヅチとノミ使い、自力で大きな穴を開けて、渡辺が出現します。今回は2017年に実施した際の様子を記録した、定点カメラを用いた映像作品を、当時の様子を再現した箱と共にインスタレーションします。渡辺が過去、実際に経験した足掛け3 年のひきこもりとは、壮絶な時期が あったり、生きづらさの“底付き”があったりしました。しかしそれらを乗り越えたことで、それまでよりも俯職的な認知を得て、他者の生きづらさにも目を向けるきっかけとなりました。ひきこもった経験を通じて多くの 気づきを得たのです。渡辺は今はもう、当時のようなひきこもりのメンタリティを持ち合わせていません。アーティストとしての活動を持続的にできるようになりました。しかしだからこそ、自らの身体に、当事者のあり方を再度憑依させ、壁の向こうの人々を想像しようとしています。山伏の山籠りの修行に、‘‘擬死再生’'という考え方があります。山は、死の象徴であり、同時に生の象徴と言われています。ひきこもることは時として、擬死再生やREBORN と言えるような、新たな人生を歩んでいくきっかけとなる場合もあるかもしれません。渡辺は、自身のひきこもりからの回復後、仏教修行を元にした「内観法」(吉本伊信考案)を2 回体験したことがあります。これは1 週間、半畳に自ら 閉じこもり、規定の内省法によって自分の半生を見つめ直す心理療法です。ひきこもりに対し、これまで社会は、非生産的であるとか怠惰であるとして 批判してきましたが、果たしてそれでいいのでしょうか?日本には、この箱が146 万個(日本のひきこもりの推計人数)もあるのだと想像してみてください。

 

 

渡辺 篤(アイムヒア プロジェクト)《私はフリーハグが嫌い)》2023 年

撮影:井上桂佑 展示風景:「NACT View 03|私はフリーハグが嫌い」国立新美術館(東京)

 

※本展では会期最終日のみ追加展示。新作2展を含む。

 

 

3、プロジェクト「私はフリーハグが嫌い」(2021 年~進行中)

…進行中のこのプロジェクトを、今回は、ドアとライトボックスの両面性をもつ立体作品8点(新作2点含む)のインスタレーションとして展示します。タイトルにある“フリーハグ”というのは東京・渋谷などをはじめとする繁華街で、ボードを掲げ、見知らぬ人とハグをするアクションのことです。平和や友好を表すこの取り組みについて、渡辺はある時、矛盾を感じました。本当にそれを求めている人には届いていないのではないかと。そもそも「社会的包摂」という概念自体、想定できる範疇の困難を抱えた人々への取り組みでしかないというジレンマがあります。私たちはいつだって他者に優しくしたいけれど、しかし、想定の外側にいる姿の見えづらい人こそが、より深い困難を抱えている可能性があります。コロナ禍は誰もが孤独や困難を抱えたことによって、他者の痛みにも想像を向けるきっかけが一時的に立ち上がった部分もあります。一方で、コロナ後にも持続的に孤独・孤立の状態にある人々も多くいます。 渡辺は、コロナ感染が収まり始めた頃から、ひきこもりの人々と共に行う “新しいフリーハグ” を始めました。応募をくれたひきこもりの方のいる場所へ全国どこへでも会いに行き、“まれびと”として半日一緒に過ごし、対話とハグを行うという取り組みです。当事者にとっての日常に風穴が空くことを期待しています。当事者の姿や声が見えづらいこの問題を象徴するように、この作品は片面側からだけではこの展示作品の全貌は分かりません。ぜひ回り込んで観てください。

 

 

 

渡辺 篤(アイムヒア プロジェクト)

 

【プロフィール】

現代美術家、社会活動家。1978 年横浜市出身。東京藝術大学大学院修了後に深刻なひきこもりを経験したものの、回復し、直後から 精力的に活動を展開し続けてきた。孤独・孤立にまつわる関係性の課題や、共感可能性と不可能性、社会包摂の在り方などをテーマに扱う。2018 年から 「アイムヒア プロジェクト」を主宰し、不可視化されがちな生きづらさを抱える人々との協働企画を多数実施。社会問題に対してアートが物理的・精神的 に介入し、解決に向けた直接的な作用を及ぼす可能性を追求している。活動家として、当事者運動やケア実践、メディア出演、講演等多数。これまでに武蔵野美術大学非常勤講師、厚生労働省 ひきこもり VOICE STATION 講師などを務めてきた。

【主な展覧会】

2023 年「あ、共感とかじゃなくて。」(東京都現代美術館)/ 個展「私はフリーハグが嫌い」(国立新美術館)

2022 年 国際芸術祭「あいち 2022」/ 「瀬戸内国際芸術祭 2022」

2020 年「Looking for Another Family」(国立現代美術館、韓国)

【主な受賞】

2020 年「横浜文化賞 文化・芸術奨励賞」

撮影:井上桂佑


 

 

渡辺 篤ウェブサイト

 

アイムヒア プロジェクトウェブサイト

 

 

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<お問い合わせ>

このページのプレスリリースのお問い合わせは、以下にお願いします。

渡辺 篤

 

電話:090-6102-3064

メール:atsushi_1009_2@yahoo.co.jp

 

 

 

そのほかイベントについてのお問い合わせは、以下にお願いします。

横浜市役所 健康福祉局 生活福祉部ひきこもり支援課

電話:045-752-8463

 

メール:kf-hkshien@city.yokohama.lg.jp