元ひきこもりの私は当事者との協働プロジェクトを多数行ってきた。
日本ではひきこもりが110万人以上居ると言われるが、当事者達が不可視の存在である為、社会の対応は遅れている。
社会と断絶した「壁の向こう」から生還した私は、元当事者の知見を生かしアートで取り組みを行う。
<他者との共感不可能性と対話の必要性>
…他者への寄り添いに「共感が必須」なのだとこれまで沢山聴いてきたしそう思っていた。
でも違う。
本当に必要とされる社会包摂とは、全く共感すらできない他者とも同じ社会でどう共存していくか考え、取り組む事。
共感は一見聞こえはいいが副作用がある。
他者から共感されにくい者こそ排他的な扱いをされる。
孤立とは共感を理想化させすぎた社会に生まれる。
それに対し「対話」は互いの違いを知り、間合いを図ることである。
関係性の再構築のために必要な対話を実践したい。
<不在の他者を想起するまなざしの必要性>
…我々はいつも正しい答えを探し、問題の「見える化・顕在化」を殊更求めてきた。
ここに集い場を共有する者たちと喜びを分かち合う事を美徳としてきた。
しかしだからこそ反転して、「見えない者達」の事を置き去りにしてきた。
今、世界は大きく反転した。孤立をネガティブなものとしてきた社会は、
ソーシャルディスタンスという皮肉な言葉を用い、誰もが不可視化・ひきこもり化した。
しかし今こそ、継続的孤立の存在に意識を向けたい。
コロナ(ウイルス)は多くの死者を出し深い爪痕を残してきたが、
一方では環境改善(大気汚染や光害の劇的改善)や働き方の見直しをもたらし、人類に対し光と陰を生み出した。
夜空の月もまた、コロナ(太陽)による光と陰で人々にその姿を見せている存在だ。
私の新プロジェクト「同じ月を見た日」は、コロナ禍に孤立を感じる世界中の人々と共に、
大気汚染軽減によって観測しやすくなった月を毎夜観察し、ここにいない誰かを見つめる。
2021.06.24