2009年
《死体を喰らういきもの》
2009年
インスタレーション
牛生肉、鎖、発泡トレー、樹脂、など
サイズ可変
個人蔵
”あなたはお肉が好きですか? スーパーに並ぶ精肉を見て何を連想しますか?すき焼き?牛丼? ハンバーグ?実は私はお肉を一切食べません。いわゆる「ベジタリアン」というやつだと思います。なったきっかけは「屠畜」に関する仕事について調べている時でした。ネット動画で「病気の牛が巨大なシュレッダー機に生きたまま投げ込まれ、雄叫びをあげながら徐々にミンチにされていく」という一部始終を観たのです(*)。おそらくそのミンチもまた牛の餌になるのでしょう。映像や書籍をいくつか見ていくうちに、自分が好んで食べていた「肉」とは「動物の死体片」であるという当たり前の事実に、改めて気付かされたました(その後、食肉解体工場にも実際に行きました)。
僕は美術家として活動しています。表現媒体は絵画や立体作品が主です。2009年2月に行われた展覧会での作品は、スーパーで購入した大量の牛肉を素材に使い、今まさに死んでいく牛のかたちを復元するというものでした。様々な部位の精肉を大量に買い集め、小さな死体片から生きていた時の全体像を再構築しています。僕が肉を摂取しない態度は、ある種の不買運動ともいえます。しかし、この作品を作るにあたっては、意図して大量な消費活動を行いました。賛否両論あるかもしれません。けれどお金を出しさえすれば他人に殺させた動物の死体を買えるというのも現実です。
「いただきます」という感謝の言葉。そのように言いさえすれば、人はどんな動物でも殺し、消費する権利を持っているのでしょうか?僕は今でもそのあたりがよく判らずに、日々悩んでいます。
(*)この動画は「病気になった牛」を、さらに牛の餌として丸ごと処理する現場を映したものである。なお、BSEが社会問題化した後は、病気の牛ミンチを健康な牛に食べさせることは“ほぼ無い”だろうとは言われている。”
(雑誌『オルタ』2009年3・4月号より。本人寄稿文を一部加筆修正したうえ引用)
追記:現在、僕は肉も多少は食べる食生活になりました。日本における現在の肉食文化の頑なさや、「食の場の人間関係」についても悩み、結果的に今のスタイルに落ち着いています。「地球における人間最優位な状態」について、「動物の生命倫理や権利(アニマルライツ)」についてなどは、今でも答えが出せずに考えています(2013年記述)。
【展示歴】
【制作・設営協力】
大貫 由美子、加藤 翼、加茂 昂