2013年
《サイレント》
2013年
ライブペインティングにて制作(3時間15分)
紙、顔料ペン、血液、額縁
初のライブペインティング。友人ミュージシャンらのライブ会場で描いた。「連鎖」を意味する「将棋倒し」を、微細な色の差で3時間、大きな紙に延々と描き続けた。一ヶ所、積み重なった駒からは血液が流れ出ている。
僕はこのライブペインティングを描く数日前、Twitterにて「差別に差別、暴力に暴力で応じるのは非合理」なる旨のつぶやきをしたのを発端として、「しばき隊(*)」の幹部らにネット上で批難され、ちょっとした「炎上」になった。僕は淡々とした言葉で対応したつもりだったが、数時間に渡り、多くの暴言を彼ら複数人から同時に浴びせかけられ続けた。
暴力や差別に対抗する為に、上からねじ伏せるパワーは本当に有益だろうか?力の重ね合いはエスカレートする。押し相撲はどちらかが倒れるまで続く。僕は誰かの微細な心の声を聞く聴力を積極的に持ちたいと思った。アートはその表明をせねばならないと感じた。本来、ライブペインティングとは、華美なパフォーマンス性を求められる風潮がある。この時は、敢えてどれだけ「小さい音」を描けるかに徹した。
いつまで経ってもほとんど白紙にしか見えない画面を前に、来場者のほとんどは面食らっていたようだ。
(*)2013年、東京新大久保などにて「在特会(在日特権を許さない市民の会)」を中心とするグループによる幾多に及ぶ、在日韓国人に対しての差別的な方法のデモが話題になって、その問題は国会でも取り上げられた。ヘイトスピーチを行なう在特会に相対し、反対行動をしたのが「しばき隊(レイシストをしばき隊)」。しばき隊側は在特会のヘイトスピーチに対して、デモを潰すべく幾度と無く衝突をした。結果的に、それぞれにとっての、正義を奪い合っているようにも見えた。争いは泥沼化し、やがて双方に逮捕者を出すまでに至った。
(作品画像はPCの場合、クリックで拡大します)
(ご来場いただいた方々の撮影写真を使わせて頂いています)