2014年
Art Lab AKIBA にて
「ヨセナベ展」DM
2014年
《「ヨセナベ展」トレーラー》2014年
【個展 「ヨセナベ展」開催概要】
会 期 : 2014/06/28(土)~ 07/19(土)
入場料 : 無料(一部有料イベント有り)
会 場 : Art Lab AKIBA
ディレクター : 佃 義徳
協 力 : 布団祭実行委員会
<会期内イベント>
06/28(土) 「オープニングレセプション」
07/04(金) 「ブルーシートハウスで座談会」
ゲスト:会田 誠、武盾 一郎
07/12(土) 「ちょうちんミラーボールを愛でる夕べ」
ライブ:當間 健一郎
【ステイトメント】
2010-2013年までの3年間、僕は鬱やひきこもりで、表立った活動を出来ないでいました。活動休止状態でした。その間にも、知人に依頼された肖像画の仕事や、会田 誠さんやchim↑pomの展覧会の手伝いはしばしばしていました。
2013年に体調は全快し活動を再開しましたが、そこから作品を観てくださるようになった方の多くは、活動休止前に発表した作品は、時間が開いてしまったのでおそらくご存じないかも知れません。しかしそれらの作品の中には、僕のバックグラウンドや考えを表す上で重要で、欠かせない作品もあります。
今回は「前向きな意味での回顧展」を一旦行うことで、活動休止前を含む活動の流れを提示し、渡辺 篤が何者であるかを知っていただければと思います。そして、これを新たなステージに進む契機にしたいと考えています。(渡辺 篤)
【解説】
渡辺 篤は2010年~2013年までうつ状態で制作ができる状況ではなかった。昨年(2013年)回復し、活動を再開したが、以前の作品をどこへも発表しておらず、今回「ヨセナベ展」という形で、新旧作品を一堂に公開することとなった。しかし、制作が滞っている間も、頼まれた肖像画を描いたり、会田 誠の絵の制作協力やChim↑pomの展覧会サポートをしていた。藝大在学中は中村 政人の手伝いをしたこともあった。
渡辺の作品は、アンディ・ウォーホルらが敷いた美学、メディア上の情報を基本にしている。最大の問題作である池田 大作の肖像《せかい なるほどい じんでん[3]》(2007年)は、東京藝術大学卒業制作として制作され、卒展で展示されて、一種の社会問題となった経緯がある。2007/03/17号『週刊現代』には「風刺か、礼賛か、はたまた・・・? 学内でも賛否両論」という見出しとともに特集されている。彼がこの超著名な人物の肖像画を描いたわけは、父親をはじめ親戚の人々がこの人物を象徴に掲げる宗教団体を真摯に信仰しているからだという。渡辺が幼少の頃から身近な存在だったのだ。
渡辺の作品はどのような意味においても、その類まれな描写力を持って描かれた絵画や立体の意味性に重要度がある。対象を単に描写するのみの制作には興味がないという。なぜそれが作られたのかという背後の意味性がより重要なのだ。かつてマルセル・デュシャンは「ある男がいて、50個のキャンベル・スープをキャンヴァスに描いたとする。そのとき問題なのは網膜に映るイメージではなくて、50個描かざるを得なかった男のコンセプトなのだ。」(マルセル・デュシャン Samuel A. Green : Andy Warhol [ The New Art ]のなかの引用より )といったが、そうした意味において渡辺はデュシャン的な概念を背景にしているともいえるだろう。
渡辺はかつて美術予備校時代に会田 誠の画集『Lonely Planet』を見て、その作品解説に刺激されたという。作品そのものというより会田自身による解説が、彼のコンセプテュアル・アート性だと確信し、以来、自身の作品に関しても1点ずつの解説をつけている。海外ではダミアン・ハーストにも影響されたという。
《澁谷蒼茶室枯山水屏風》(2013年)という作品は、一見、日本画の金箔を貼った屏風絵を思わすものの、実は石庭に見えている部分はブルーシートのホームレステントの風景なのだ(渡辺は2010年に半年間、宮下公園でホームレスと公園生活をしていた)。金屏風に見えた素材も渋谷で拾い集めた段ボールに描かれている。この作品は渋谷の百貨店の美術画廊で発表されたものだが、高価な美術品を扱う百貨店の画廊に、貧困のどん底にあえぐ渋谷ホームレスの図を対比していたのだ。渡辺はかつて246表現者会議という美術家を中心とする会議体と関係したこともあるが、その件で某大手企業に対抗したこともあった。
他にも「街宣車」や「鼻くそ金塊」などの作品がある。いずれも世の中の権威や拝金主義的なリッチなイメージに一考させる疑問符を投げかけるような試みだ。
渡辺は今回の個展で会場の中央に「なべ」と書かれたミラーボール状の大ちょうちんを掲げ、ブルーシートで空間を覆いつくすことで、おつにすました美術なる現場を、安手のクラブかのようにわざと設える。展覧会全体が美術界という既存の価値観に新たな視点をもたらすような工夫が施されている。
こうした自分の生活や周りにある社会現象を題材とすることは、その身近性ゆえにドメスティックな作家に見られがちだが、背後の概念が社会性や普段は容易に窺うことのできにくい現象の視覚化といったことにおいては、世界美術史の基準もまた内包している。こうした日本現代美術と世界現代美術の接点に立っているということにおいては、会田 誠とダミアン・ハーストの双方からの視線がこめられているのかとも思う。(森下 泰輔|美術評論家)
展示風景 : 「ヨセナベ展」Art Lab AKIBA、東京、2014年/撮影 : 小山 仁
展示風景 : 「ヨセナベ展」Art Lab AKIBA、東京、2014年/撮影 : 小山 仁
【展示作品リスト】
2013−2014年
インスタレーション
作者のアトリエの外壁を切り取とったモルタル壁、スプレー、ペンキ、監視カメラ型式モニター
(監視カメラ型式モニター/ビデオ 05分32秒)
モルタル壁サイズ : 130×195(cm)
個人蔵
2,
2013−
ビデオ及び絵画
ビデオ 06分30秒
撮影 : 鎌田 昇、音 : 椚人、編集 : 渡辺 篤
絵画
キャンバス、エナメル塗料、 アクリル絵の具、額
59.0×49.0(cm)など (額装込み)
一部、個人蔵
3,
2013
四曲一隻屏風
渋谷で拾ったダンボール、空き缶、古新聞、アクリル絵の具、その他
131.7×312.0(cm)
4,
2013
渋谷で拾ったダンボール、空き缶、アクリル絵の具、アクリル板
53×53(cm)
個人蔵
5,
2014
写真、アクリルマウント
29,7×40,6(cm)
※同タイトルインスタレーション作品(2009年)のドキュメント写真
ed.30
6.
2008年
2点1組
廃棄された皮革製品を分解し再縫合
左右共に74×69(cm)
7,
2007年
インスタレーション
2年間溜めた作者の鼻くそ、日本銀行本店地下金庫の金の延べ棒展示台(複製)、ビデオ
サイズ可変
個人蔵
8.
2007年
キャンバス、油絵の具、オイルパステル、自作額縁、参考文献パネル、研究ファイル
キャンバスサイズ : 233.6×187.3(cm)…フレーム含む
9,
《「river」シリーズ》
2001年、2014年
写真、額、LED
10,
《ぴかちゅう~ぽけもんのばけもん~(怒りのパフォーマンス)》
2008年、2014年
写真、金属金具
30.5×38.8(cm)
11,
2014年
襖四枚立
アクリル絵の具、デジタルプリント、襖
175.9×359.6(cm)
12,
2013年
手描き合成
写真、アクリル絵の具
写真サイズ : 9.0×12.8(cm)
台座サイズ : 15.0×15.0(cm)
13,
2013年
拾った石、展示台、LEDライト、その他
台座サイズ : 15.0×15.0×53.6(cm)
14,
2014年
塩ビ鏡、発泡スチロール、回転モーター、塗料
130×60×60(cm)
15,
《とうきょうげいだい 122しゅうねん きねんぐっず》
2009年
ラジコン、アクリル塗料、プラスチック、針金、ステッカー、スピーカー
(音源 : 「上野の桜 [ 替え歌 ] 」 59秒)
ーーーーーーグッズーーーーーーーー
16,
《とうきょうげいだい 120しゅうねん きねんぐっず》
2007年
ミニカー、アクリル塗料、プラスチック、針金、その他
限定120
17,
《落描き禁止ステッカー「落描き禁止-らくがきしてはいけないばしょにはりましょう-」》
カラー大1枚/モノクロ小 8枚セット
18,
《なべちょうちんクッキー》
19,
《オリジナルバッジ》
20,
《渡辺 篤 作品集『ワタナベ』》
(発売延期)
【会期内イベント】
「ブルーシートハウスで座談会」
個展 「ヨセナベ展」内イベント
2014/07/04(金) 19ー20時
進行 : 渡辺 篤
ゲスト : 会田 誠、武 盾一郎
過去作品に「ホームレス」、「ダンボールハウス」などの共通項のある3人で語るトークイベント。
渡辺 篤による作品解説や、ゲスト両氏との出会いについても。
「ちょうちんミラーボールを愛でる夕べ」
個展 「ヨセナベ展」内イベント
2014/07/12(土) 20ー22時
ライブ : 當間 健一郎
展覧会場の照明を落とし、ミラーボール形式の新作「ファットマン(なべちょうちん2014)」を 活かしたDJイベント。
【制作・イベント協力】
上竹 純犀、武田 海、松田 修、Andy Faz Kawasaki、梶間 浩之、山中 さゆり、鎌田 昇、遠田 明音、中山 拓也、
和楽 夢楽、佐藤 静、中川 竹弘、深海 絵理香、鞍田 恵子、渡邊 悠太、桜井 貴、宮川 ひかる、谷口 可奈、杉木 公明(順不同)
【撮影】
小山 仁
【主催】
アートラボ・アキバ
【ゲストディレクター】
佃 義徳
【イベントゲスト】
会田 誠、武 盾一郎、當間 健一郎
【協力】
布団祭実行委員会