2015年
「3331アートフェア2015」での展示の様子
【ステイトメント】
多くのスポーツ、特に対人競技の起源は、殺人や戦争のような争いがもとになっているらしい。大昔から人は人を殺してきたのだろう。例えば「サッカー」は8世紀頃のイングランドで戦争での殺し合いの果てに、勝った側が負けた側のボスの首を斬り、蹴り飛ばしたのが発祥だという。のちにそれは祝祭に形を変え、競い合って門へ蹴り入れる様になったのだとか。ボクシングや柔道、剣道、相撲などもおそらく人間同士の殺し合いの中から生まれたのだろう。やがて、争いはルールを持ち、人を殺さないようにもなって、そして平和な「スポーツ」へと意味を変えた。
また「将棋」は、古代インドのボードゲーム「チャトランガ(*)」を起源とし、戦争(やその戦略図)をボードゲーム化した遊戯である。
このシリーズでは将棋の形式を引用し、戦争をスポーツ化(戦争改定)させる提案をしたいと思う。「戦前」という言葉が皮肉にもならない今日、アートの無力さを感じ鬱々としたりもしたが、そんな提案を今はしてみたいと思う。(渡辺 篤)
(*)「チャトランガ」…戦争好きの王に戦争をやめさせるため、戦いを模したゲームを高僧が作り、王に献上したのが始まりとされている。チェスなどもチャトランガを起源とするものではあるが、唯一将棋はルール上、駒が卓上から外されても再度登場することが出来る。つまり直接的な死を回避した戦争ゲームと解くことも可能だ。将棋は近年、 [ SHOGI ] として国際的に認知されている。
「3331アートフェア2015」にて発表した本シリーズは、2015年1月に起きたイスラム国による日本人ジャーナリスト殺害事件を受けて急遽制作をした。また、以前にも制作した将棋倒しをモチーフとした作品からも、視点は繋がっている。映像作品ではインターネットを通じ、出演する様々な国籍の外国人を募集した。
【「3331アートフェア2015」開催概要】
会期 : 2015/03/21〜29
会場 : アーツ千代田3331、東京
《駒》
2015年
発泡スチロール、ウレタンなど
170×170×40cm
ED : 2
《新しい戦争》
2015年
ビデオ
5分00秒
ED : 10
映像出演 : Jeffrey Chiedo、Chuck Franklin、Idris Veitch、Travis Klose、Jennings Jin、Pak Tongryong、Eric Pelletier、鎌田 昇、ひろポン、杉木 公明、ジョイス (順不同)
映像撮影 : 井上 圭佑
編集協力 : 鎌田 昇
協力 : Art Lab TOKYO、アーツ千代田3331
《将棋倒し》
2015年
インスタレーション
将棋の駒、塗料
サイズ可変
《正義倒し》
2015年
将棋の駒、アクリルケース、塗料など
30×5×5cm
ED : 10
《新しい戦争(フィギュア)》
2014年
フィギュア、木材、将棋盤など
34×35×31cm
ED : 5
「アーティストトーク」3331アートフェア2015にて
【受賞】
「3331アートフェア2015」におきまして、渡辺 篤は3つの賞を戴きました。
「塩入 敏治 賞」、「橋爪 勇介 賞」、「Art Lab TOKYO 賞」
【制作/設営協力】
ジョイス、三谷 めめ子、柳川 たみ
【映像出演】
Jeffrey Chiedo , Chuck Franklin , Idris Veitch , Travis Klose、Jennings Jin , Pak Tongryong , Eric Pelletier
鎌田 昇、ひろポン、杉木 公明、ジョイス (順不同)
【映像撮影】
井上 圭佑
【編集協力】
鎌田 昇
【協力】
Art Lab TOKYO、アーツ千代田3331